夢の中で生まれた名曲?
ヴァイオリンの歴史には、さまざまな名手が登場しますが、その中でも少し不思議なエピソードで知られている作曲家がいます。
それがイタリアのヴァイオリニスト、Giuseppe Tartini です。
タルティーニは1692年にイタリアで生まれました。若い頃は実は音楽家ではなく、大学で法律を学んでいたと言われています。ところが恋愛問題がきっかけで町を離れることになり、その後修道院のような場所で静かに暮らしているうちに、ヴァイオリンの練習に熱中するようになったそうです。そこから腕を磨き、やがてヨーロッパでも有名なヴァイオリニストになりました。
そんなタルティーニの名前を有名にしているのが、とても印象的なタイトルの曲です。
それが 「悪魔のトリル・ソナタ」 という作品です。
この曲には、こんな面白いエピソードが残っています。
ある夜、タルティーニが夢を見ました。夢の中で、なんと悪魔が現れてタルティーニのヴァイオリンを手に取り、驚くほど素晴らしい演奏をしたというのです。あまりにも美しい音楽だったので、タルティーニは夢の中で感動してしまったそうです。
そして目が覚めると、すぐにヴァイオリンを手に取り、「今の曲を思い出して書き留めなくては!」と急いで楽譜を書いたと言われています。こうして生まれたのが「悪魔のトリル・ソナタ」でした。
ところがタルティーニは後になって、こんなことを言っています。
「夢の中で悪魔が弾いた音楽は、これよりもはるかに素晴らしかった」
つまり、必死に書き留めたものの、夢の中で聴いた演奏にはどうしても届かなかった、というのです。なんだか少し悔しそうな気持ちが伝わってきますね。
ちなみにこの曲の最後には、ヴァイオリンでトリル(細かく震えるような音)を長く続ける難しい部分があります。この印象的な技巧から、「悪魔のトリル」という名前がついたとも言われています。
タルティーニは優れたヴァイオリニストであるだけでなく、音楽理論の研究者としても知られていました。演奏や作曲だけでなく、音の仕組みについても深く考えていたそうです。
クラシック音楽の作曲家には、こうしたちょっと不思議で面白いエピソードがたくさんあります。曲を聴くときに「この音楽は夢の中から生まれたのかもしれない」と思うと、少し違った楽しみ方ができるかもしれませんね。
もし機会があれば、ぜひ「悪魔のトリル・ソナタ」を聴いてみてください。もしかすると、夢の中で悪魔が弾いたという音楽の面影を感じることができるかもしれません。

