バッハとクリスマス
バッハとクリスマスの音楽のお話
12月になると、街中がキラキラと輝きはじめ、クリスマスソングがあちこちから聞こえてきますよね。お店で流れているキャロルや讃美歌を耳にすると、自然と心が温かくなる方も多いと思います。そんなクリスマスの音楽の中で、ちょっと特別な存在感を放つのがヨハン・セバスチャン・バッハです。
バッハとクリスマスといえば、やっぱり「クリスマス・オラトリオ」が有名です。これは6つのカンタータ(宗教音楽)をつなげた大作で、クリスマス当日から新年、そして公現節(1月6日ごろ)までのお祝いを音楽でたどるように作られています。まるで長いクリスマスドラマを音楽で楽しむようなイメージです。
冒頭は、トランペットとティンパニが「じゃーん!」と鳴り響く、とても華やかな曲。聴くだけで胸が高鳴り、まるで祝福の光に包まれるような感覚になります。一方で、羊飼いや天使の歌を描いた合唱や、美しいアリアもあって、にぎやかさだけではなく、しっとりとした温かさも感じられるんです。バッハは聖書の物語を音で描き出し、聴く人をクリスマスの世界へ連れていってくれるんですね。
実は、バッハは毎週の礼拝のためにたくさんのカンタータを書きました。その中には、クリスマス前の待降節に歌われる「いざ来たれ、異邦人の救い主よ」など、今でも親しまれている曲がいくつもあります。私たちが「クリスマスらしい響き」と感じる要素の中には、バッハが築いた音楽の伝統が大きく関わっているんです。
そしてバッハの魅力は、ただにぎやかでお祭りのような音楽だけでなく、静かで優しい祈りのような響きもあること。キャンドルの光の中で家族と過ごす時間や、雪の降る夜にふと心を落ち着ける瞬間にも、彼の音楽はぴったり寄り添ってくれます。
今の私たちにとって、クリスマスは宗教を超えて「大切な人と一緒に過ごす時間」や「一年を振り返る温かなひととき」になっています。そんな時にバッハの音楽を聴くと、まるで300年前のライプツィヒから贈られる特別なプレゼントを受け取ったような気持ちになれるんです。
今年のクリスマス、もしちょっと特別な音楽を楽しみたいと思ったら、ぜひバッハの「クリスマス・オラトリオ」やカンタータに耳を傾けてみてください。イルミネーションの輝きにも、静かな夜にも、不思議とぴったり寄り添ってくれると思います。

